Bar.
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コラム

2006-03-30

カクテル名「吐 息」

カクテル名「吐 息」
処方  春の微風 を 一吹き
    夏の時雨れを 一雫
    秋の枯葉 を 一葉
    冬の細雪 を 一降り
 其々の素材が永い月日を重ねて
醸しだす息吹を集める。
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Bar.の一場面
「吐息の想い」

隣の席のアベックの男性が席を立って出ていった。
残された女性が声にならない吐息を漏らした。
彼女にとって、その男性は
八年経っても蒼い色に変わる事の無い信号機と同じだった。

私は目の前に注がれた
冷えたギムレットを一気に流し込んだ。
こよなく愛した酒を飲み干した時、
酒に理屈は要らないと云う
当然の想いが其処にあった。
木目のカウンターに置かれた
ロックグラスの上を
ターンテーブルから流れ出る
レコードの音色が通り過ぎていき
私を酔わせる。
キャンドルの灯りが揺れ
煙草の煙が流れ出し
Bar.の扉が開いた。
小雪が深深と降る冷えた晩
鳴る事の無いダイヤル式の古い電話
静かに息を潜めるバックバーの酒たち
微かに流れるビリーホリデーの唄声
誰も居ないカウンターで
あの時のホットカクテルを飲み
心をとかしていく。

by 木本 伸二